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陰陽師-付喪神ノ巻





『陰陽師-付喪神ノ巻』 夢枕獏

「おまえが、本当は、自分のことを独りだと思っていることがだよ。正直に言えよ晴明。おまえ、本当は、淋しいのだろう。この世に、自分しかいないと思っているのだろう。おれは、おまえのことが、時々、痛々しく見える時があるのだよ」

ご存じ夢枕さんの陰陽師シリーズ三冊目です。
『つくもがみのまき』と読みます。

・瓜仙人
・鉄輪
・這う鬼
・迷神
・ものや思ふと……
・打臥の巫女
・血吸い女房

の七本の短編集。

今回は《鉄輪》《這う鬼》《迷神》と、悲しい恋愛ものが多かったな〜という印象です。

特に《鉄輪》は陰陽師の映画一作目でも主のエピソードとして使われていますし、後の初の陰陽師長編でも使われています。夢枕さんの思い入れの強い作品なのでしょうか?
とても悲しいお話で、読んでもホロリ……映画でも友人数名と見に行ったのですが、鈴木だけホロリしていました。
博雅の優しさ、誠実さが良く描かれている名作だと思います。

そしてこの七本の短編の中の二本に『蘆屋道満(あしやどうまん)』という味なキャラクターが登場します!

ぼうぼうと伸びた白髪。
どれだけ洗濯をしていないのかわからぬほど垢じみて、汚れた水干を着ていた。
顔の色が陽焼けと汚れとで赤黒く、無数の皺が、深く顔中に刻まれていた。
獅子鼻。
そして、ぎょろりとした、猛禽のような、黄色く光る眼をしていた。


白い狩衣をふうわりと纏って。だの、
白い指先で杯を赤い唇に運んで。だの、
暑くても汗一つかいていない。だのと表現される晴明とは随分対照的な男ですが、晴明と張り合うことが出来るのはこの男しかいないという程の陰陽師です。

人とは違う力を持って生まれた彼は孤独で、その力でちょっと人を翻弄して嘲笑うのがせいぜいの楽しみだと思っているようで、同じ境遇の晴明が《博雅》という実直な男と出会い、人や俗世を『愛おしい』と思い始めていることに少々の嫉妬と、おもしろさを感じている……と鈴木は読んでいて感じました。

そうそう、晴明と博雅の仲良しっぷりも健在ですよ!

「おれは、おまえが女のところにゆくなどというから、なるほど、おまえも人なみなところがあったのが、安倍晴明も女のもとへ通うというようなことがあるのだなあと思っていたのだ」
「そうでなくて残念だったか」
「いや、残念ということではない」
「では、そうでなくてよかったということか――」
「そういうことをおれに訊くな」


とかね。
晴明が足しげく女の元へ通うような姿はやっぱり見たくないなあと、鈴木も思いますよ。
博雅の晴明への一種乙女チックなくらいの『憧れ』を感じました。

そしてその、相手への『想い』が一方通行ではないことが、冒頭に引用した博雅のセリフに晴明が返したセリフでわかります。

「おまえがいるではないか、博雅」

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